2018.12.21
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開業・経営

開業医の節税――役員報酬のリスクと備えておくべきポイント

(写真=Looker_Studio/Shutterstock.com)
(写真=Looker_Studio/Shutterstock.com)
医療法人を設立した後、役員報酬の決め方について悩む医師は多いでしょう。役員報酬には、根拠がなければ税務上の経費として認められないリスクがあります。役員報酬の設定方法について、今一度見直してみましょう。

役員報酬を支払うと節税になる理由

個人事業の場合、収益から経費を引いた金額がそのまま院長の手取り額になります。また、配偶者に専従者給与を支払っているケースも多いでしょう。

一方、医療法人を設立すると収益から経費を引いた金額は医療法人の利益となるため、院長にも役員報酬を支払う必要があります。専従者給与は個人事業だけの特例なので、配偶者にも役員報酬を支払うことになります。

また、業務実態があればご子息やご息女、親戚を役員として迎え、役員報酬を支払うこともできます。役員報酬は節税になると税理士から提案されても、どういう仕組みで節税になるのか、正しく理解できていない人も多いのではないでしょうか。

役員報酬が節税になる理由は2つあります。1つ目は、所得税が累進課税であることで、所得税は所得が大きくなるほど税率が高く設定されています。

例えば、院長1人が年間3,000万円の役員報酬を受け取ると、40%の所得税率が適用されます。しかし、院長が1,500万円、配偶者が900万円、ご子息が600万円の役員報酬を受け取った場合、役員報酬の総額は3,000万円ですが、それぞれに適用される所得税率は院長が33%、配偶者が20%、ご子息が20%となります。

つまり、所得を分散するほど1人にかかる所得税率が低くなるため、全体で見ると所得税の負担が少なくなるのです。

2つ目は、役員報酬を支払うことで給与所得控除が受けられることです。給与所得控除とは、支払った役員報酬のうち所得税が課税されない部分のことをいいます。給与所得控除は収入金額に応じて設定されており、最大で220万円の控除が受けられます。給与所得控除は1人ずつ利用できるため、役員の数が多くなるほど非課税部分が増えることになります。

役員報酬が経費になる条件

メリットの多い役員報酬ですが、経費にするためには条件があります。「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のうちいずれかの要件を満たしていないと、役員報酬を支払ったとしても経費にすることができません。役員報酬が経費と認められないと、多額の法人税がかかることがあるため注意しましょう。

「定期同額給与」の要件とは、毎月支払う役員報酬の金額が一定であることです。役員報酬を変更することができるのは、決算後3ヶ月以内です。それ以降に支払う役員報酬が毎月同額であれば、役員報酬は経費として認められます。定期同額給与は一般的であり、これで役員報酬を経費にしている医療法人がほとんどでしょう。

「事前確定届出給与」とは、あらかじめ税務署に届出をし、日付・金額ともに届出書の通りに支払った役員報酬については、毎月同額でない部分も経費として認められるという制度です。「業績連動給与」とは、利益に関する指標に連動する金額を役員報酬として支払う方法ですが、同族会社では認められていないため、医療法人で支給されることはほとんどありません。

役員報酬の金額を決める時の注意点

役員報酬を変えることができるのは決算後3ヵ月以内なので、決算を迎える前によく検討し、来期の利益予想も踏まえた上で1年間無理なく支払い続けられる金額に設定しましょう。また、法人であれば社会保険料の負担が発生します。役員報酬が高額になると社会保険料も高額になるため、社会保険料や天引きされる所得税の金額を踏まえて役員報酬を決めることが大切です。

役員報酬を決める時は、業務実態と見合っているかどうかを考慮して決めるようにしましょう。例えば、ほとんど出勤していない、事業にも携わっていない親族に多額の役員報酬を支給していた場合、税務調査で指摘されるリスクがあります。

毎月同じ金額であることは、あくまで役員報酬が経費として認められる最低要件です。それさえ守っていれば確実に経費にできるというわけではないので注意しましょう。税務調査では、税務署の調査官が役員との面談を求めるケースもあります。その際に、業務内容や事業への貢献についてきちんと説明できる必要があります。

文・木崎 涼(医療機関専門のファイナンシャル・プランナー/M&Aシニアエキスパート)

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