2018.11.14
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開業・経営

欧米でMBAを取得する医師が増えている?医師にも必要なビジネスマインド

(写真=Life and Times/Shutterstock.com)
(写真=Life and Times/Shutterstock.com)
医師の仕事内容が多様化し、患者の診察や治療、治療薬の研究だけに留まらず、経営やマネージメントにも強い、ビジネスマインドを持った医師は事業や組織を成長させる上で貴重な存在です。欧米ではこうした需要に応え、MBA(経営学修士)を取得する医師が増えており、医学博士(MD)を同時に専攻できるプログラムを提供する大学やビジネススクールが増えています。

「ビジネスエリートのパスポート」MBA

日本の経営学修士にあたるMBA(Master of Business Administration)。一般的なMBAプログラムは、会計・経済・金融・経営・マーケティング・リーダーシップ・ビジネス理論・戦略といった専門分野に沿ったカリキュラムが組まれており、各分野で必要なビジネス及びマネジメント・スキルを学びます。MBAで習得したスキルを活用できる分野は、民間企業から政府、公的機関、そして病院や診療所を含む医療機関まで、非常に広範囲に及びます。

欧米でMBAは「管理職エリートのパスポート」としてキャリアアップを狙うビジネスパーソンに人気が高く、特にハーバード大学やスタンフォード大学、イェール大学といった名門大学のビジネススクールのMBAは人気です。

特に米国では2年間の全日制のMBAコースが一般的ですが、「働きながら学べる」という理由でパートタイムやオンラインのMBAコースも人気が高まっているそうです。

医師がMBAを取得するメリットは?

多忙なスケジュールの合間をぬって、MBAを取得する医師が欧米で増えているのは何故でしょう?時代の変化と共にヘルスケアをビジネスと捉える傾向が強まっており、より効率的な医療ケア・マネージメントの必要性に対応する手段として、医療業界でもMBAの価値が高まっているからです。

近年、患者にとっての価値を高める「バリュー・ベース・ヘルスケア(VBHC)」が 、欧米を中心に拡大しています。VBHCではより精密な医療コストと品質の監視が必要となるため、一部の専門家は「医学へのビジネスアプローチが必須となる」との見解を示しています。

身近な例を挙げてみましょう。医療機器の購入、治療費用、助手の手配、開業あるいは移転準備など、自分の専門分野外の業務に頭を悩ます医師も少なくないはずです。新しいCTスキャナーの購入を検討しているのであれば、性能や価格のみを重視するのではなく「いつ、どの価格帯のスキャナーを投入し、どれぐらいの期間でどれぐらいの利益を出せるのか?」というように投資の観点から検討する、開業・移転を計画しているのであれば不動産投資と捉え、立地や集客性を考慮する必要があります。

こうした経営・マネージメント面で、ビジネスマインドを持った医師とそうでない医師の差が目立ちます。MBAの取得は医師という枠組みを超え、経営者やマネージャー、組織のリーダーとしての裁量を発揮する機会も与えてくれるのです。

MBAと医学博士(MD)を同時に専攻できるMBA/MD

需要の拡大に応え、MBAと医学博士(MD)を同時に専攻できる「dual-degree(二重学位)MD/MBA」を提供する大学が増えています。1993年にはわずか6校でしたが、2018年現在はハーバード・メディカル・スクールやボストン大学、イエール・スクール・オブ・メディシンなど65校でMD/MBAが学べます。

ジョージ・ワシントン大学やノースカロライナ大学チャペルヒル校は、MD/MBAのオンラインコースも提供しているので、日本からでも受講可能です。

ボストンのMD/MBA生は「ヘルスケアはビジネスであり、ビジネス用語を理解するまでは、ヘルスケアでビジネスするのは難しい」と、従来の医療教育と今日の医療サービスの需要のギャップを指摘しています。またMD/MBAプログラム協会のマリア・チャンドラー会長は、医師としてのキャリアの早期段階でMD/MBAを取得することで、「自らが提供するケアやそのエコシステムを理解しやすくなる」とコメントしています。

MBA取得後のキャリアアップ

MBAの取得は、医師としてのキャリアをさらに大きく広げる可能性を秘めています。医薬品マーケティングや病院管理、ウェルネスセンター、医療機関管理から、医療政策の策定や政府の保健医療プログラムの実施支援など、病院や診療所以外の場所で活躍するチャンスが期待できます。

バイオテクノロジー、医療機器、医療情報学、データ分析、人口管理の分野における進歩により、MD/MBAを取得した医師の需要は今後も増え続けると予想されています。キャリアの半ばで成長の機会や転職先を探している医師も、MBAの取得を検討する価値はあるでしょう。

しかし「医師は医療分野に専念し、マネージメントなどは他のスタッフに任せるべき」という意見も聞かれます。

どれだけ医療やテクノロジーが発達しても、特定の臨床上の問題について深い知識と見解を持った医師が必要です。MBAを取得した医師は貴重な存在ではあるものの、「全ての医師がMBA取得者である必要はない」と、ハーバード・ビジネススクールでMD/MBAを取得したある生徒は述べています。

この辺りはMD/MBAの需要と供給のバランスを上手にとることで、医師にとっても患者にとってもより効率的で快適な医療システムが築けるのではないでしょうか。

文・アレン・琴子(英国在住のフリーライター)
 

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