2018.10.14
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開業・経営

医療機関でのキャッシュレス決済は広まっているのか?

(写真=vchal/Shutterstock.com)
(写真=vchal/Shutterstock.com)
日本全体でのキャッシュレス決済の割合は、2015年の時点で20%弱と他国に比べて低い値でした。経済産業省は2025年にキャッシュレス決済比率40%を、将来的には80%を目指しています。では、医療機関でのキャッシュレス決済の現状はどうしょうか。近年、医療費の支払い方法も変化しつつあります。

クレジットカード払い――対応する病院は増えている

キャッシュレス決済のうち、代表的なクレジットカード利用の現状はどうでしょうか。

以前は、患者にとって医療機関は現金払いのイメージが強かったと思われます。その後、病院でのクレジットカードやデビットカードによる支払いについて要望があり、2010年に総務省が国立病院や国立大学病院などに対し、クレジットカード払いの導入について働きかけを行いました。

これによって、近年はクレジットカード払いに対応する病院が増えています。例えば、東京都では「都立病院改革」の一環として都立病院でのクレジットカードの取扱いを拡大し、すべての都立病院でクレジットカード払いが可能になっています。

現在、総合病院や大学病院などはほとんどのところでクレジットカード払いに対応しています。中規模の病院はまちまちで、小規模の病院や診療所については対応しているところは少ない状況です。

電子マネー払い――JR系の病院はSuicaなどに対応

クレジットカード払いに対応する病院が増えるなか、電子マネー払いにも対応する病院があります。

JR東日本系の病院であるJR東京総合病院では、クレジットカード払いに加えてSuicaなどの交通系電子マネーが利用可能です。日本赤十字社 芳賀赤十字病院では、クレジットカードやデビッドカード以外にも電子マネーのiDやnanacoを利用することができます。

医療法人岡仁会 大分共立病院では、入院費の支払いに多くの交通系電子マネーに加えiD、nanaco、QuicPay、楽天Edyなど非常に多くの電子マネーに対応しています。

病院内のコンビニエンスストアでは電子マネーを使えるところが多いですが、医療費の支払いにも使えるところはそれほど多くありません。また利用できる電子マネーの種類もまちまちなのが現状です。

中小規模の医療機関へのキャッシュレス普及の課題

キャッシュレスが十分に普及していない中小規模の医療機関にとって、普及に向けての課題は何でしょうか。

大きな課題は、キャッシュレス決済による手数料です。キャッシュレスによる支払いが行われると決済手数料の支払いにより病院の利益が減ります。総務省の資料によると、病院のキャッシュレス決済手数料は診療費の0.6~1%程度のようです。しかしこの数字は、主に大病院への調査結果が元になっています。

中小規模の医療機関がキャッシュレス払いを導入すると、これより手数料が高くなることが想定されます。医療機関へキャッシュレス決済サービスを提供している会社の情報では、手数料は3%台以上と案内しているところが目立ちます。手数料が1%未満と3%以上では、医療機関の経営への影響は大きく変わります。

中小規模の医療機関にキャッシュレス決済が普及するためには、フィンテック(Fintech)などによる低い手数料の実現が期待されます。

クレジットカードや電子マネー以外のキャッシュレス決済

クレジットカードや電子マネー以外のキャッシュレス決済として、「後払い」があります。

2004年にスタートした株式会社エムイーエックステクノロジーズの「医療費あと払い」は400余りの医療機関で導入されています。料金は口座振替やNTTファイナンスによる電話料金とまとめて支払い、ソフトバンクのスマホ代とまとめて支払い、クレジットカード払いなど、様々な支払い方法を選ぶことができます。

2016年には、医療情報のネットワーク化を推進するメディカル・データ・ビジョン株式会社が、患者が自由に支払日を決める医療費後払いサービス「CADA(かーだ)決済」をスタートしました。このサービスは、入会金や年会費が無料で保証人不要など加入しやすいものになっています。

後払いサービスを利用することにより、患者は診療後に会計を待たずに帰宅できるなどのメリットがあり、今後の普及が期待されます。

訪日外国人の医療費支払い

訪日外国人が増えている中、訪日外国人の医療費の支払いについても考える必要があります。2017年の訪日外国人数は2,869万人となり、前年比19.3%と増加しています。医療機関でのキャッシュレス決済は、現金をあまり持っていない訪日外国人の医療費不払い対策にもなります。

2015年の世界のキャッシュレス決済の状況は、日本のキャッシュレス決済比率が18.4%であったのに対し、欧米諸国では50%前後、中国では60%、韓国では89.1%でした。支払いに現金を使うのが一般的な日本人と、キャッシュレス決済が一般的な中国人や韓国人とでは、支払いに対する考えは異なるでしょう。これは医療機関がキャッシュレス化を進めるべき一つの理由になります。

訪日外国人に限らず日本人も含め、救急で現金を持ち合わせていない場合や高額となる医療費など、患者にとって現金を用意できない場合があります。また医療機関内で高額の現金を持ち歩くことは盗難リスクを高めます。小規模の病院や診療所を含めたすべての医療機関がクレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済に対応することが望まれます。

文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)

 

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