2018.10.13
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開業・経営

医療訴訟の現状と医療紛争を防ぐためにできること

(写真=Photographee.eu/Shutterstock.com)
(写真=Photographee.eu/Shutterstock.com)
医療紛争は、医療機関や医師と患者側双方にとって負担が大きいものです。さらに医療紛争が訴訟になった場合には、裁判が終わるまで負担が続きます。医療機関はそのような医療訴訟を避けたいものです。今回は、医療訴訟の現状と医療紛争を防ぐためにできることについて確認しておきたいと思います。

医療訴訟の年間新規件数

医療訴訟として提訴される年間の件数(新受件数)は、2004年にピークとなる1,110件を記録しましたが、その後2009年には732件まで減りました。そして近年は800件台で横ばいに推移し、2017年の速報値では857件でした。これらの件数は訴訟になった件数であり、訴訟にならずに示談などで解決した医事紛争は含まれていません。

2004年に件数が多かった理由として、医療事故の頻発が当時社会問題化していたことが考えられます。

医療訴訟の和解の割合

それでは、どれだけの訴訟が和解に至っているのでしょうか。2004年に訴訟が終局したうち、和解によるものは46.1%で判決によるものは40.3%でした。2017年の速報値では、和解が54.6%で判決が32.5%であり、近年は判決が減り和解が増えているのが分かります。

裁判での和解は大きく2つのケースに分けられます。一つは医療機関の過失が認められないことを前提にしたケースで、医療機関が患者へ解決金などの名目で数十万円程度を払うものです。もう一つは医療機関が責任を認めたケースで、容認額に近い和解金を患者側へ払うものです。また和解の中にはこれらの中間のケースなどもあります。

医療機関側が敗訴した割合と賠償金額

医療訴訟で医療機関側が敗訴となった割合はどうでしょうか。2004年の医療訴訟の容認率(敗訴した割合)は39.5%でしたがその後減少し、2017年の速報値では20.5%と13年で約半分になりました。参考までに通常訴訟での容認率は2017年の速報値で84.9%でした。この値から医療訴訟での容認率は、通常訴訟に比べて非常に低いことが分かります。

2017年の医療訴訟のうち、判決で終局したのは32.5%で、そのうち敗訴したのが20.5%です。よって医療訴訟件数全体で考えると、全体の6.7%のみが敗訴になっていることが分かります。

敗訴した場合の損害賠償額は訴訟により様々です。医療過誤による患者の死亡では数千万円など、医療過誤で患者が植物状態になった場合には損害賠償額が1億円を超えたケースもあります。

診療科目別の割合

医療訴訟の地裁による既済件数(裁判が終了した件数)を診療科目別に比率が高いものを2011年と2017年で比較します。

2011年は内科23.5%、外科16.0%、整形外科12.1%、産婦人科10.6%、歯科9.9%でした。

2017年は内科24.0%、外科14.9%、整形外科13.3%、産婦人科が7.2%、歯科11.7%でした。

産婦人科が大きく減少していますが、2012年以降の産婦人科は7%程度で推移しており、2011年のみ高い結果でした。近年は診療科目別の割合に大きな変化はないといえるでしょう。

医療訴訟にかかる期間

医療訴訟にかかる平均期間(平均審理期間)を見ると、2000年の平均審理期間は35.6ヵ月で、2017年は24.2ヵ月です。17年で平均審理期間は約3年から約2年に短縮されたことが分かります。医療訴訟は専門性の高さ故に審理が長期間に渡り、裁判が終了するまでの期間が長かったのです。医療訴訟の審理の改善のために、主要な裁判所に医事事件集中部(医事部)を設けて医療訴訟を集中的に扱うなどの対策を行うことで審理期間が短くなりました。

短くなったといっても、2年もの間訴訟に関わるのは医師などに大きな負担がかかるため、医療訴訟はできるだけ防ぎたいものです。

2015年10月から施工された「医療事故調査制度」などにより、医療事故の報告が定着してきています。日本医療機能評価機構への医療事故情報の報告件数は2005年には1,114件でしたが、徐々に増加し2017年には3,598件になりました。これらの活動が医療事故の減少に繋がることを期待します。

訴訟以外での医療紛争の解決

訴訟以外にも医療紛争を解決する方法がいくつかあります。そのうちの一つが医療ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決)です。医療ADRは、裁判所での訴訟とは別の観点から医療紛争を解決する方法として、各地の弁護士会や茨城県医師会などにより設立されました。医療ADRでは、患者側と医療機関側との話し合いにより紛争を解決することを目指しています。

一般的に裁判による紛争解決には費用と時間がかかりますので、低費用で迅速に紛争解決を目指すADRが果たす役割が期待されています。一例として、札幌弁護士会のADRでは3ヵ月以内の紛争解決を目指しています。

医療紛争を防ぐために

医療訴訟を防ぐには、医療事故を減らすだけではなく、患者側とのコミュニケーションの向上が重要になります。患者側が医療事故だと思う大きな要因として「誤解」があります。患者側の誤解は、患者と医師のコミュニケーション不足が起因していることがあります。

インフォームド・コンセントだけでなく、医療事故やトラブルが発生した場合の患者側への適切な説明が紛争を防ぐ、あるいは小さくする可能性があります。医療事故やトラブルが発生した場合に誰が何を説明するかの仕組みをつくり、シミュレーションしておくことが望ましいでしょう。

文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)

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